世界保健機関(WHO)が新たなガイドライン「運動・身体活動と座位行動に関するガイドライン」を発表

世界保健機関(WHO)が新たなガイドライン「運動・身体活動と座位行動に関するガイドライン」を発表

2020年12月28日

世界保健機関(WHO)は2010年に発表した「身体活動に関するガイドライン」を更新し、2020年11月25日に新たなガイドライン「運動・身体活動および座位行動に関するガイドライン(WHO Guidelines on physical activity and sedentary behaviour)」を発表しました。

〇 運動・身体活動および座位行動に関するガイドライン(WHO Guidelines on physical activity and sedentary behaviour)URL

本ガイドラインは子供、青年、成人、高齢者を対象に推奨される運動・身体活動量を提示するとともに、妊娠中や産後の女性、慢性疾患のある人、障がいを持つ人に向けても目安を示しています。

また、運動・身体活動に関するガイドラインでは初めて、座位行動を最小限にとどめて、低強度でも問題ないので身体活動を取り入れることを推奨しています。

*リラックスしている時間やテレビを見ている時間を含み、概ね、運動強度が1.5METs以下の行動を指す。

■対象別運動・身体活動の推奨事項(一部抜粋)

● 一般的な成人 18~64歳

  • 週に150~300分の中強度の有酸素運動、もしくは75~150分の高強度の有酸素運動、またはその組み合わせで同等の時間・強度となる身体活動を実施する。
  • 1週間のうち2日は、中強度以上の負荷をかけた筋力トレーニングを取り入れる。
  • 座位行動は低強度でもいいので身体活動に置き換える。

● 青少年 5~17歳

  • 平均で1日60分の身体活動(多くは有酸素運動)を実施する。
  • 1週間に3日は高強度の有酸素運動や筋力や骨を強化するトレーニングを取り入れる。
  • 座位時間は最小限にとどめる。特に娯楽目的でデジタル機器のスクリーンを見ている時間を少なくする。

● 高齢者 65歳以上

  • 1週間で150~300分の中強度の有酸素運動、もしくは75分~150分の高強度の有酸素運動、もしくはその組み合わせで同等の時間・強度となる身体活動を実施する。
  • 1週間のうち2日は、中強度以上の負荷をかけた筋力トレーニングを取り入れる。
  • 1週間のうち3日は、身体的なバランスや筋力を維持するための複合的な身体活動を行い、転倒を予防する。
  • 座位行動は最小限にとどめ、低強度でもいいので身体活動に置き換える。

● 妊娠中、産後の女性

  • 1週間で150分程度の中強度の有酸素運動を行う(有酸素運動に加えて、筋力トレーニングやストレッチを取り入れることも非常に有効である)。
  • 座位行動は最小限にとどめて、低強度でもいいので身体活動に置き換える

● 慢性疾患(高血圧、2型糖尿病等)のある人

  • ウォーキングなどの中強度の有酸素運動を週に150~300分以上、より強度の強い有酸素運動であれば週に75~150分、あるいは中強度の運動と活発な運動を組み合わせて実施する。
  • 高血圧や2型糖尿病、がんなどの慢性疾患のある人も、ウォーキングなどの運動や身体活動を習慣として行う。
  • 慢性疾患のある人は、運動をすることで、それぞれの病状の改善が期待できる。
  • 必要に応じて医師などのアドバイスを得ながら、安全かつ効果的に運動を続けること。

■座位行動のリスクと運動・身体活動の効果

長時間のテレビの視聴など、座ったまま過ごすこと(座位行動)が多い生活スタイルは運動不足になりがちで、肥満やメタボリックシンドローム、高血圧などは、そのリスクを高めます。運動の継続は、全原因の死亡リスクの低下や心疾患、脳卒中などの予防になるとともに、うつ病や不安の軽減、認知機能の低下の低減などにも効果があります。高齢者にとっては、運動・身体活動を行うことで将来の介護や寝たきり予防につながります。

■最後に

WHOの調査によると、世界で成人の4人に1人(約27.5%)、青年の4人に3人(約81%)は身体活動の推奨事項を満たしていないことが明らかになりました。運動不足により、世界では5.2兆(540億米ドル)の直接医療費が失われ、1.5兆円(140億米ドル)の生産性低下を引き起こしていることが報告されています。WHOは「世界中で運動不足が解消されることは、年間で最大500万人の死亡を防げる」と強調し、2018年に身体活動に関する世界行動計画(GAPPA)を発表しました。 本研究室では、GAPPA6) 7)の日本語版翻訳および公開・推進に携わっています。「健康な世界に向けて一人一人よりアクティブに」という大目標に向け、多レベルの身体活動促進を着実に進めて参ります。

参考文献

1) WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour(ガイドライン本文)
https://www.who.int/publications/i/item/9789240015128     

2) WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour: at a glance(要約版)
https://www.who.int/publications/i/item/9789240014886

3) 世界保健機関による新たなガイドライン「身体活動および座位行動に関するガイドライン」について – Sport Topics – 笹川スポーツ財団 (ssf.or.jp)

4)身体活動と座位行動に関するガイドラインを発表(WHO) | 健康ひょうご21県民運動ポータルサイト (kenko-hyogo21.jp)

5) 「運動を増やして、座りがちの時間は少なく」 糖尿病の人も積極的に運動を WHOの新しい「運動ガイドライン」 | ニュース | 糖尿病ネットワーク (dm-net.co.jp)

6)身体活動に関する世界行動計画2018-2030(パブリックコメント) – ふじさわ プラス・テン (keio.ac.jp)

7)WHO『身体活動に関する世界行動計画2018-2030』の日本語版完成のお知らせ – お知らせ | 慶應義塾大学スポーツ医学研究センター (keio.ac.jp)

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